車に搭載されているバッテリーのサイズってどういうもの?
以前バッテリーの点検に関して解説させていただきました。
そのなかで、バッテリーの種類やサイズに関してほとんど触れていなかったと思います。
車のバッテリーは、車によって大きさが異なります。
車のバッテリーサイズを知るにはバッテリーサイズの見方を理解する必要があるため、バッテリーサイズの適合表と、バッテリーの交換方法についてご紹介します。
また、突然バッテリーがあがってしまった場合の対処法も、あわせてご紹介します。
バッテリーのメンテナンスに関して、以下の記事で紹介しております。
まずは取り扱いについて一読ください。
まずはバッテリーの搭載箇所です。
車種によって搭載される位置は変わってきますが、乗用車は画像一枚目のようにエンジンルームに搭載されていることがほとんどです。
プリウスなどのハイブリッド車に搭載される補機バッテリーは車室内に搭載されていることが多く、例として画像2枚目は30系プリウスです。
ラゲッジルーム下部右側に設置されています。
最近のハイブリッド車はエンジンルームに設置されている場合もあるので、車種別の取扱書にて確認することをおすすめします。
トラックは画像3枚目のように、車体のメインフレームの左右どちらかの外側に設置されていることが多く、一部の軽トラックはボンネット内部に設置されていることがあります。
しかし、キャンピング仕様車など一部の架装車については架装に伴いバッテリーの位置が変わっていることもあるので、取扱書で確認することをおすすめします。
続いて、バッテリーの内部構造です。
車に使用されるバッテリーは鉛蓄電池というもので、鉛で形成した電極を複数枚重ねることで充放電をスムーズに行えるようになっています。
鉛蓄電池は、正極(陽極板)に二酸化鉛(PbO₂)、負極(陰極板)には海綿状の鉛(Pb)、電解液として希硫酸(SO₄²⁻)を用いた2次電池です。
画像1枚目は放電時、2枚目は充電時でバッテリー内部の化学反応(酸化還元反応)を表した図になります。
正極・負極の双方から電解液中に硫酸イオンが移動することで充電されていき、電解液中の硫酸イオンが正極・負極の双方に移動することで放電を行います。
放電すると、硫酸イオンが正極・負極の双方に移動するために電解液の比重(希硫酸の濃度)は徐々に低下していき、逆に充電すると硫酸イオンが電解液中に放出されるため比重は上昇していきます。
なお、電解液の比重の変化は、放電時に正極で水が作られることも大きく関係しています。
化学反応による硫酸イオンの減少に相対して電解液中に水が生成されるため、放電時に比重が低下するのが上記の化学式で分かると思います。
公称電圧(発生電圧の目安)は1セル(正極・負極・電解液が1組になった蓄電池)あたり2.1Vと、比較的高い電圧を取り出すことが可能で、電極材料の鉛も比較的安価なため二次電池の中では世界でも最も生産量が多いです。
車に搭載されるバッテリーの電圧はすべて12Vとなっていますが、これは電極を組み合わせた蓄電池を6セル直列に接続しているからであり、バッテリー全体での総合的な公称電圧は12.6Vとなります。
他の二次電池と異なり、短時間で大電流を放電させても、長時間で緩やかな放電を行っても比較的安定した性能を持っていて、放電しきらない状態で再充電を行っても一時的な電圧降下(メモリー現象)は表れない特徴があります。
一方、他の蓄電池に比べて大型で重く、希硫酸を使うために漏洩や破損時に危険が伴います。
過放電によりサルフェーション(白色硫酸鉛化)と呼ばれる現象が生じて充放電の効率と容量の低下を引き起こしてしまいます。
また、充電量の低下に伴って電解液の濃度が低下することで凝固点(凍結温度)が上がるため、極寒地では電解液が凍結しやすくなり、凍結時の膨張によりケースが破損する場合もあります。
このため、こまめに充電して過放電を避けたほうがより長く機能を維持することができます。
空になるまで放電させる用途のために電極を改良したディープサイクルバッテリーというものも存在するそうです。
また、このバッテリーには搭載する車の性能に合わせて、様々な種類もバッテリーがあり、バッテリー全体の寸法が変わってきます。
上記の画像にあるバッテリーの端子間に「55B24L」という表記があります。
これはJIS形式(日本工業規格)で定められた表記で、バッテリーの性能、寸法、端子位置を6桁の英数字で表しているものです。
最初の55はバッテリーの性能を表していて、50以上の場合はこの性能ランクが5刻み(60・65・70)で表記され、50未満の場合は2刻み(42・44・46)と表記されます。
数字が大きいほど性能が高いことを表しています。
次のBは短側面のサイズを表していて、JIS規格で幅×箱高さ(mm)の数値をもとにアルファベット(A~H)で区分されています。
次の24は長側面の長さを表していて、この場合だと箱の長さが24cmであることを表しています。
最後のRは端子の位置を表していて、+端子を手前にしたときに+端子が右端にくるとR、左にくるとLを表しています。
最近の車にはアイドリングストップ機能が搭載されているものがありますが、アイドリングストップ車用のバッテリーも存在します。
アイドリングストップ機能のある車は放電充電の繰り返しが多くなり、バッテリーへの負担が大きいため、性能が高いものが搭載されています。
こちらは電池工業会規格(SBA)によって表示方法が定められていて、従来のバッテリーと比べて表示されている形式が少し異なります。
最初のMはサイズを表していて、「J」「K」「M」「N」「P」「Q」「S」「T」の8段階が存在します。
これらは通常のバッテリーサイズの短側面と長側面の3辺計をひとつにまとめたもので、それぞれ「B17」「B19」「B20」「B24」「D20」「D23」「D26」「D31」に相当します。
次の55は性能ランクを表して、JIS規格と同様に数字が大きいほど性能が高いことを表しています。
最後のRは端子の位置です。Lの場合は無表記となります。
このバッテリーは従来のバッテリーよりも性能が優れているため、通常の車にも使用することができます。
メーカーによってはアイドリングストップ車用であることを表すSBA規格の形式と、それに相当するJIS規格の形式双方を掲載しているものもあって、アイドリングストップ車ではない車でも、どのバッテリーが使用する車に適合しているのかを分かりやすくしている場合があります。
ハイブリッド車にも補機バッテリーというものが搭載されていますが、こちらも従来のバッテリーとは少し異なります。
バッテリー内部の化学反応によって多量の水素ガスが発生するのですが、ハイブリッド車の補機バッテリーはほとんどが車室内に搭載されていることが多いため、ガスを車外に放出するための構造が必要になります。
なので補機バッテリーには特殊な制御弁(VRLA)を搭載しなければならないために専用のバッテリーが開発されています。
基本的な性能ランク・サイズはJIS規格と同様に表されていますが、必ず「S」から始まっています。
これはそのバッテリーにVRLAが搭載されていることを表しています。
バッテリーが上がってしまったときはどうしたらいいか焦ってしまう方も多いと思います。
キーをまわしてもエンジンがかからないとき、他の車から一時的に電気を分けてもらうことが出来ます。
これを「ジャンピングスタート」と呼びます。
「ジャンピングスタート」にはブースターケーブルと呼ばれる2本(赤・黒)の専用のコードが必要になります。
もしくは携帯用のモバイルブースターケーブルも販売されているので、そちらを用意しておくと救援車がなくても始動することができます。
不意のバッテリー上がりに備えてトランクルームに常備しておくことをおすすめします。
ジャンピングスタートは、電気を供給してくれる救援車(24V電源を有するトラックは使用不可)を用意します。
ボンネットを開けて近くに止め、エンジンを停止させてからブースターケーブルをつなげます。
一番重要な端子をつなぐ手順はバッテリー上がりの車のプラス、救援車のプラス、救援車のマイナス、バッテリー上がりの車のマイナス(端子ではなくエンジンの金属部分など)の順でつなげます。
確実につながったことが確認できたら、救援車のエンジンをかけてアクセルを踏んで回転を少し高く保ちながら、バッテリー上がりの車のスターターを回しエンジンを始動します。
エンジンが始動したら、ケーブルはつないだ時とは逆の順番で取り外します。
その後、走行することは可能となりますが、バッテリー自体が寿命を迎えていたり、損傷している場合は、エンジンを止めると再び始動できない場合も考えられます。
発電機が不調の場合は走行中に止まることがあるので、ディーラーや専門店で早めに点検してもらいましょう。
以上が、バッテリーに関する記事になります。
今回は補足という形でバッテリーのサイズの見方について解説してきました。
愛車のバッテリーのことを知っておけば、急なバッテリー上がりでも慌てず対処することが出来ます。
是非、確認してみてください。