4WDの仕組み解説!
4WDの仕組みや燃費性能、メリット・デメリットをまとめました。
テレビCMや雑誌で「4WD」と書かれていることをよく目にしますが、構造や特徴を掲載していきます。
4WDとは、「4 Wheel Drive」の頭文字をとった略字で「四輪駆動車」のことをいいます。
自動車は基本的には前輪か後輪の2輪のみを駆動する方式が主流となっています。
「AWD」(All Wheel Drive:全輪駆動)とも表記されることがありますが、厳密にいうと四輪駆動車のみではなく六輪駆動車などの特殊な車も含まれています。
最初から4WD車として設計される車は、悪路走行を目的としたクロスカントリー4WD、ハイパワーエンジンを搭載したスポーツカーなどがありますが、コンパクトカーやセダンなどでは、もともとの設計はFFかFRで、後付けするかのように4WDを追加する方法が良く取られています。
このためFF車ベースの4WD、FRベースの4WDという呼び方をし、走行性能もFF、FRそれぞれの特徴が出る傾向があります。
この駆動方式にも、構造や機能によっていくつか種類があります。
①フルタイム式(センターデフ式/コンスタント式)
上記の画像のようにエンジンの動力をセンターデフによって前後輪に分配され、常時4輪駆動で走行する駆動方式です。
前後輪を接続する駆動軸の間にセンターデフと呼ばれるデファレンシャルギア(デフギア)を置き、旋回時などの前後輪の回転差を吸収することができ、常時全輪に適切にトルクを分配するため、高速走行や雨天時の走行における安定性に優れます。
悪路などでタイヤがスリップしてしまうとディファレンシャル機構内部が高速回転によって破損してしまうため、センターデフに直結機構(デフロック)を備えているものや、リミテッド・スリップ・デフ(LSD)を用いることが多いです。
②パートタイム式(セレクティブ式)
通常は2WD(2輪駆動)で走行し、必要な時にドライバーの操作によって4WDに切り替える方式のことを「パートタイム4WD」といいます。
この方式にはセンターデフ内部のギアを、シフトレバーを介して直接切り替える機械式と、スイッチによるモーターの操作で切り替える電気式があります。
なおこの方式ではセンターデフを持たない構造がほとんどで、四輪駆動においては前後の回転差はタイヤと路面の間での強制的なスリップによって吸収されます。
悪路での使用を前提としているので、フルタイム式のデフロックとほぼ同じ状態になります。
⑤フルタイム・パートタイム複合式
前述のパートタイム式のトランスファーとフルタイム式のセンターデフ(デフロック)の両方を持ち、ドライバーの操作で必要に応じて切り替える方式のことを指し、二駆での省燃費、四駆センターデフ付での安定した走行、四駆直結での悪路走破性、いずれのメリットすべて得られます。
本格的な悪路走行を目的としたクロスカントリー4WDに採用されることが多いです。
二重装備による重量増加の欠点もありますが、もともとこのような4WD車では、4WD切替に副変速機(複トランスファー)が搭載されていることが多く、2WD走行用のデフと4WD用のデフの両方を積載する重量増はあまり大きな問題とはなりません。
トヨタでは「マルチモード4WD」、三菱では「スーパーセレクト4WD」という名称がついています。
④スタンバイ式(オン・デマンド式/パッシブ式)
センターデフの代わりに流体クラッチ(カップリング)を持たせたもので通常は2WD(二輪駆動)で走行し、どちらかのタイヤが空転して前後で回転差が発生した時に自動的に4WDに切り替える方式のことをいいます。
車輪に付けられたセンサーからの情報をコンピューターが解析して即座に切り替えるシステムとなります。
⑤トルク・スプリット式(アクティブ・トルク・スプリット式/アクティブ・オン・デマンド式)
スタンバイ式と同様にカップリングを使用した方式です。
スタンバイ式では前後輪の回転差(スリップ)を検知してから4輪駆動に切り替えますが、この方式は滑ることを予測して駆動するため、走行性・安定性が格段に向上しています。
また発進時やコーナリングでも後輪が駆動し、駆動配分は二輪駆動(100:0)から前後直結4WD(50:50)まで自在に動くものが多いです。
⑥アクティブ・トルク・ベクタリング方式
アクティブ・トルク・スプリット式の一種で、ヨーコントロールデフを組み合わせ、走行状況に合わせて左右の駆動輪間でも駆動力を自在に可変配分させる高度な四輪駆動システムです。
従来型の四輪駆動システムが物理的な障壁として抱えていた旋回中の走行性能や安定性の低下という弱点を克服し、後輪駆動車に勝る旋回性能を獲得しました。
⑦電気式(e-4WD/エレクトリック4WD)
主にFF車ベースに採用される方式で、エンジンによる前輪の駆動とは別に後輪側をモーターで駆動する方式となります。
近年ハイブリッド車に採用される4WDの駆動方式はほとんどがこれになっています。
⑧動力分散型
駆動する一つ一つの車輪、または前後の車軸ごとに動力源を取り付けたものです。
出力がほぼそのままタイヤの駆動力となることからエネルギー損失が少なく、4輪の動力配分を自由に決められるので、今後登場する電気自動車に広く実装されていくのではないかと思います。
⑨パーマネント式
永久直結式とも呼ばれる、最も原始的な四輪駆動方式です。
黎明期の試作的な四輪駆動車や、軍用車両や農耕用車両の一部にのみ見られます。
前後の回転差を吸収するセンターデフを持たないことはもちろん、トランスファーすら持たないか、あるいは持っていても二輪駆動の状態を選べないため、通常路面での使用や、高速走行にはまったく適していません。
メリット
・悪路での走行性能に優れる
4WDは前輪か後輪のどちらか一方が空転してもトランスファーやセンターデフの機構によって他の車輪に動力を分配できるので未舗装路や雪道などの走行に適しています。
2WDではぬかるみにはまったりへこんだところへ駆動輪が落ち込んだりすると、そこから抜け出すのは困難ですが、4WDではほぼ問題なく走破することが可能です。
・エンジンの動力を効率よくタイヤに伝えることができる
4WDは4輪すべてに駆動力を分配できるという特徴があります。
例えば、エンジンの出力を100としたとき、単純計算で前輪に50、後輪に50となります。
FFでは前輪に100となり、FRでは後輪に100の力がタイヤに加わります。
このとき、滑りやすい路面などでタイヤが路面を掴む力を70とすると、100の力が加わったホイールは空転してしまいます。
これは、タイヤの性能がエンジンの性能についていかない場合も同じです。
4WDであれば、空転せずにエンジンの力をすべてタイヤに伝えきることができます。
この特徴は、以下に挙げるメリットに繋がります。
・雪道や凍結した道路での走行性能が高く、安全
・ハイパワーエンジンを搭載したスポーツカーの走行性能が向上する
・高速走行時の加速力に優れる
デメリット
・コストが高い
4WDの機構が必要なため、どうしてもコストがかかります。
最近では、軽自動車など幅広く4WD車が揃っていますが、2WDのグレードやオプションと4WDのグレードやオプションを比較すると、メーカーや車種によっても様々ですが、約20〜40万円ぐらいの差があることが多いです。
・車両重量が重くなり燃費性能が低下する
2WDでは不要なセンターデフなどは大きな重量増の要因となります。
この重量増加に伴って、2WDと比較すると燃費性能は劣ります。
4WDは基本的にフロントが重いため、コーナリングのとき外側へ車が膨れてしまうアンダーステアの傾向があります。
・4WD機構が破損しやすい
特にフルタイム式にありがちなことですが、「H2」「H4」「N」「L2」「L4」など、使用環境に応じてトランスファー・センターデフ内部のギアを切り替えるのですが、悪路走行用のシフト位置で舗装路を通常走行するなど誤った使い方で機構を破損させる事例があります。
また電気式のパートタイム方式では経年劣化によるモーターの作動不良で2WDと4WDの切り替えができなくなることが多いです。
4WDについてのまとめ記事はいかがでしたでしょうか。
4WDの特徴、メリットやデメリットなどについて、おわかりいただけたのではないでしょうか。
車を買うとき、駆動方式の選択は重要なポイントですね。