低燃費を誇るCVT! ~構造と特徴まとめ~
最近、多くの車に採用されていて低燃費というワードがぴったり当てはまるCVTですが、そもそもどんな構造をしているのでしょうか?
他にもよく聞くことがあるATと一体何が違うのでしょうか?
ここでは、CVTの燃費やエンジン音とCVTのメリット、そしてATとの違いをまとめてみました。
様々な疑問をお持ちの方には是非とも読んでいただきたいです。
「CVT」とは、「Continuously Variable Transmission」の略称で、日本語では「無段変速機」または「連続可変トランスミッション 」という動力伝達機構です。
CVTは大きく分けると、ベルト式、チェーン式、トロイダルの3種類で、いずれも歯車ではない機構を用いて、変速比を連続的に変化させます。
いくつかの歯車の組み合わせで変速するAT(オートマチックトランスミッション)が
数段階のギア比から走行状況に応じて最適な変速段を選ぶのに対し、CVTの場合は歯車ではなく自由に径を変えることのできるプーリー(滑車)と、それにかけられたチェーンを用いることで無段階に変速することができます。
そのためいつでも最適なギア比を選択でき、しかも駆動力を途切れさせることなく走行できます。
ここからは方式別にCVTを解説していきます。
・ベルト式CVT
ベルトと2つの可変径プーリーを組み合わせ無段階に変速を行う機構のCVTで、ベルトの材質や構造で区別されます。
「ゴムベルト式CVT」
エンジン側プーリーに内蔵されたウエイトローラーという錘が、回転数により生じる遠心力の大小でその位置を変えることで径を変える機構です。
ゴム製ベルトの張力により駆動を伝える無段変速機は20世紀初頭から存在していましたが、当初は伝達できるトルクが小さくゴムベルトの耐久性も不十分であったためスクーターや小型車などの低出力エンジンの車両にしか使用できませんでした。
スクーターの駆動方式では、現代に至るまでこの手法が主流を占めています。
ベルトは曲げ抵抗と発熱が少なく耐久性の高い、自動車のタイミングベルトに採用されるコグベルトが用いられています。
「スチールベルト式CVT」
強靱な特殊鋼数枚を重ね合わせて形成したスチールベルトに金属製の「コマ」をびっしりと填め込んだものです。
プーリーからの駆動力は隣り合ったコマからコマへの圧力として伝達され、スチールベルトは従属的な位置決めガイドとして動作します。
ゴムベルト式CVTと決定的に違うのは、ベルトの張力ではなくコマを押すことによる押力により動力を伝えることです。
スチールベルト式CVTの登場によって受容トルクは向上したものの、当初はその信頼性や操作性においてやや難がありました。
しかし開発者ファン・ドールネの特許期限が切れて以降は他メーカーの独自技術開発が一気に進み、さらなる大排気量・大トルクに対応できるようになり現在の主流となりました。
「エクストロニックCVT(日産)」
プーリー比を変える油圧を車速や負荷に応じ微細に電子制御を行うもので、単純な油圧制御に比べてCVTの欠点である運転性の悪さを払拭しました。
このCVTにはトルクコンバータ式クラッチが組み込まれており、坂道発進や車庫入れなどの微速走行が容易になっています。
日産はこのシステムでトルクコンバータ式クラッチのCVTの普及に業界での先鞭をつけ、少排気量のモデルから比較的大排気量のモデルにもCVTを採用する実績を挙げています。
「ABSの作動」を伴い「3速以上のギヤ比」で停止した場合は3速に固定されます。
解除方法は、発進し時速20km位まで加速すると解除されます。
「副変速機付CVT」
副変速機付CVTはセカンダリープーリ(出力側ドリブンプーリ)の後に遊星歯車式の副変速機を設置しています。
この遊星歯車は2速のステップAT(有段変速機)ともいえるもので、前進2段の変速機能と後退切替機能を共有しています。
発進時にはCVTのプーリ比が最大かつ副変速機が前進Loで作動し、速度が上がってプーリ比が小さくなると、前進Hiに自動変速すると同時に再度プーリ比を大きくします。
これにより従来のCVTに比べて変速比幅が拡大されて、発進加速と高速走行時の燃費の向上が図られています。
また前進Hi状態から前進Lo領域まで減速した場合や中速域での高負荷走行時には自動的に前進Loへシフトダウンを行うため、CVTでありながらキックダウンが発生します。
小型CVTユニットはプーリ径の制約から、変速比幅が6.0までと狭いため、その改善を目的に開発されました。
副変速機付CVTは7速ATをしのぐ変速比幅7.3を実現しています。
このときのバリエータの変速比幅は4であるため、理論上は変速比幅を11程度まで拡大することも可能ですが、そこまで広い可変性はかえって過大となります。
このため副変速機装備で生じた構造面のマージンは、変速ユニット自体の小型化へ振り向けています。
「乾式複合ベルト式CVT」
スチールベルト式CVTと異なり、ベルト素材はアラミド繊維の芯線を特殊耐熱エラストマーで挟み耐熱帆布でコーティングしたものです。
コマはアルミニウム合金をアラミド繊維と炭素繊維で補強した特殊耐熱樹脂で包まれています。
樹脂素材に自己潤滑性があるため金属ベルトCVTのようなフルードは不要となっています。
動力の接続には電磁クラッチが採用され、低速域ではベルト式変速ではなくギア駆動となっているのが特徴です。
・チェーン式CVT
チェーンの張力によって2個の可変径プーリ間で動力を伝達するCVTです。
押力で作動するスチールベルト式に外観が似て見えますが、力学的には同じく張力で動力を伝達するゴムベルト式に類似しています。
スチールベルト式よりも、低速側・高速側の変速比における伝達効率が良く、またプーリ巻きかけ半径を小さく出来るため、プーリ径を小型化したり、同じ体積で変速比を拡大できます。
欠点はピンとプーリが点接触して動力を伝達するため、面で接触するスチールベルト式よりも更に騒音が大きくなりがちです。
・トロイダルCVT
フリクションドライブを高度に発展させた形態です。
入力側と出力側の2枚のディスクが平行に配置され、その間に複数のパワーローラー(コマのようなもの)が強い力で挟まれています。
パワーローラーの傾斜角を変化させるとそれに応じて2枚のディスクの回転数の比も変化し、可変変速比が得られます。
入・出力ディスクの形状とそれに挟まれたパワーローラーの接し方の違いで「フルトロイダルCVT」と「ハーフトロイダルCVT」があります。
各ローラー間に強制スリップがほとんど発生しないほぼ「点」で接する球形パワーローラーのハーフトロイダル式のほうが伝達効率が高く、理想に近いとされています。
対するフルトロイダル式は「線」で接する円盤形パワーローラーを用いており、円盤の両端で半径に差ができるため、どうしても強制スリップが発生してしまいます。
強制スリップの問題もあるため、現在はハーフトロイダル式だけが製品化されています。
メリット
・変速ショックがなくスムーズな加速ができる
・車速にかかわらずエンジンを効率の良い回転数と負荷領域で運転可能
・低回転領域での高負荷運転ができ、燃費の向上が可能
・減速時を運転領域で燃料カットが可能
・部品点数が少なく小型化に有利
・運転者の操作や運転状況によって変速領域を切り替え、エンジンの吹け上がりを感じられるスポーティーな演出、また低車速、低加速度運転時の低燃費運転を優先する設定など、一台の変速機に複数の性質をもたせることが可能
・ステップATと同程度の定常時伝達効率が実現できる
デメリット
・ステップATと比べてコストが高い
・ドライブプーリ接触面の高摩擦係数が必要で、鍛造、熱処理、加工、表面処理にコストがかかる
・摩擦係数の向上と摩擦損失の低下を両立することが難しい
・変速動作中の伝達効率が低い
・ステップATと比較して変速比幅が狭い
・特に高回転(高速走行)時などはプーリを押しつけるために必要な高い油圧を賄うオイルポンプが駆動損失と同時に伝達効率の低下を招く
・金属ベルトから特有のメカノイズが発生する
・受容トルクが低いため、トラックやバスなどの大型車には使えない
・金属ベルト式はプーリ径が大きく、直列エンジン縦置き車に使用される縦長形状のケースに収めにくい
・通常のATと比べるとフィーリングが大きく異なる
・アクセルペダルを踏み込んでから加速が始まるまでのタイムラグが大きい(CVTラグともいわれる)
・通常のATはエンジン回転数(=エキゾーストサウンド)の変化と車速の変化には関係性がある一方、CVTは変速比を連続可変できるため、エンジン回転数を変化させることなく加減速することが可能であると同時に運転者が車速の変化を感覚的に認識できない場合がある
・スロットルの僅かな開度変化でプーリー径が変化することがあり、不快な前後衝動(不連続の加減速感 = スナッチ)が起こる
・CVTで有段変速を行った場合、連続可変の優位性を損なう
・スチールベルト式CVTにおいて車速が高く、プーリー回転数が高い場合、ベルト自重の遠心力によりベルトとプーリーの密着力が低下し、滑りによる破損の危険性がある
以上、CVTの解説でした。
どのメーカーでも低燃費とスムーズな加速、静寂性などをテーマにしていますが、視点を変えてみると多くの特徴が見えてきます。
通常のATよりも繊細な動作を行うので、過走行による異音や走行不能といったトラブルもそれなりにあります。
しかし定期的なメンテナンスを行うことでそうした不具合を事前に予防することもできるので、CVTの寿命そのものは短いわけではありません。
今CVT車にお乗りの方も、そうでない方も、車のトラブルは前触れなく突然やってくることもあるので、しっかりとメンテナンスをしてください。
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