車の外装あるある ~ABS製?FRP製?素材の違い~
私は車の雑誌をよく読むのですが、その中でも「VIP STYLE」という雑誌をよく読んでいます。
それ以外にも車のカタログやパーツカタログなども気になったものは何でも読んでしまいます。
そうした雑誌やカタログの中で、車を構成する部品の材質なども細かく掲載されていますよね。
その中でもバンパーやエアロパーツの材質に「ABS樹脂製」と「FRPゲルコート仕上げ」という2種類がよく見られると思います。
ざっくり説明してしまえば、どちらもプラスチックで、主に材料が異なります。
ABS製とFRP製の違いを簡単にまとめてみました。
ーABS樹脂製ー
そもそもABSというのは、「アクリロニトル・ブタジエン・スチレン」の略で、原料である3つの樹脂の頭文字をひとつずつ取って名前になったプラスチック素材です。剛性が高く、硬いゴムのように弾力があり、割れにくいので耐衝撃性に優れています。
また、寸法安定性に優れており、射出加工や押出加工での大量生産に向いている事から、純正オプションの外装部品に使われる事もあります。
一方、長時間の日照で劣化するなど耐候性がやや劣ります。
古くなると表面が傷んだり、歪みや反りなどの変形を引き起こすこともあります。
有機溶剤に溶けやすい性質を活かして、DIY補修ではアセトンでヒビなど破断面を溶かしてくっつけ、修理の下地にする事もあります。
ーFRPゲルコート仕上げー
FRPも素材の略称で、正式名称は「ファイバー・レインホース・プラスチック」と言い、グラスファイバー(ガラス繊維)で補強された、「繊維強化プラスチック」です。弾力が無く割れやすいプラスチックのベースにガラス繊維を使い、薄くとも強度と弾力性を持たせています。
あまり大量生産向きではありませんし精度を出すのが難しいですが、例えば純正ボンネットを型取りして雌型さえ作ってしまえば、ホームセンターにあるような材料でも簡単にFRPボンネットを作れてしまう手軽さが魅力です。
その特性から、ショップや個人で独自に雌型を作ってFRPで奇抜なエアロを作るなど、ワンオフや少量生産に向いています。
なお、FRPは雌型から剥がすとむき出しのガラス繊維で表面がザラザラ、チクチクしたりします。
それを防ぐため雌型に先にゲル状の樹脂をコーティングしてからFRPを貼り、下地作りをしやすくしているのが「ゲルコート」です。
一般的には塗装前のサンディング(塗装の食いつきを良くするために表面を少し粗く削る)での傷を目立ちにくくする場合に、白いゲルを使ったものが「FRP白ゲルコート」と呼ばれます。
デザインの精度を重視するならABSですが、任意のデザイン作成と補修の容易さを重視するならFRPです。
少しでも寸法が狂っていては見栄えが悪いパーツ…例えば画像のようなヘッドライトのアイラインのように目につく部分や、曲面に貼り付ける必要のある部分は、精度が高く弾力性のあるABS樹脂の方が合わせやすくなります。
ただし、元の寸法が合っていなければ意味が無いので、他のユーザーのパーツレビューを参考にするのが無難です。
逆に、多少の寸法は気にせず大胆なデザインとなれば、そもそもFRP一択の場合が多くなります。
また、FRPには「壊れてもABS樹脂より修理がしやすい」というメリットがあり、裏からグラスファイバー(ガラス繊維)のシートを貼るかパテを塗り、表面をパテ埋めしてならせば外見上は元通りです。
元の強度は出ないので同じところから割れやすいものの、また簡単に直せますし、修復不可能なほど破損しても買い換えはFRPの方が安価です。
純正品ではポリプロピレン系の素材を使う事が多く、多少弾力があっても結局は割れやすいFRPやABS樹脂を使う事は減りました。しかしアフターパーツではまだまだ数多く作られています。
リアスポイラーなど破損の可能性が低い部品や、クオリティを求めるとABS樹脂は捨てがたいのですが、ここは高価な設備も材料も不要で、安価に作れるFRPで外装を作成することができるので、ドレスアップの幅はより一層広がります。
FRPのバンパーやボンネットを自作している人は数多くいらっしゃいますので、それらの意見を参考に自作してみるのも良いかもしれません。
興味を持たれた方は、インテークやエアアウトレットなど後付けパーツも販売されておりますので、作ったFRPパーツを自分で加工し、プラモデル感覚で自分だけのオリジナルパーツを作ってみてはいかがでしょうか。